こんにちは、個別教師Campライターの西村です。さて、今回は「漢字の覚え方」について書いてみたいと思います。「漢字の書き取りが大変だ」とか「(お子さんが)書き取りをやらない」と言ったことから、「漢字の暗記は不要」と言った意見などにも関連付けてみようと思います。今回もお付き合いのほどよろしくお願いします。
「漢字」について
漢字の学習は、小学校から始まる国語の基本ともいえるものです。次いで国語の宿題の定番でもありますね。漢字ドリルからの書き取り練習は、今現在も続く漢字学習の根幹です。そもそも漢字学習は、小中学校9年の義務教育で常用漢字(2136字)を習得することとしています。それは「言語活動通して、国語で正確に理解し適切に表現する資質・能力」の育成を目的としています。
小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説「国語編」より抜粋
至極当たり前のことですが、私たちは日常で日本語を使って生活しています。子どもも大人も、学校や会社、家庭で会話もするし、多くの文字を見聞きしています。その日本語の文字のひとつが漢字です。
漢字の成り立ちと国語
ご存知の通り、漢字は今から約3300年前(約紀元前1300年)に中国で作られた文字です。これが1世紀~4世紀頃に日本に伝わったとされます。つまり約2000年近く私たち日本人は使ってきた文字です。そしてその長い期間では、国字(和製漢字ともいわれます)も約2600字にもなります。もとは中国で生まれた漢字ですが、私たちのご先祖様は、日本人の生活、風土や習慣慣習に合った漢字も作り出してきたのです。さらに平安時代には、漢字(真名文字ともいい、正式な文字の意)を簡略した仮名文字(平仮名、片仮名)を作り出したわけです。
漢字の役割
私たちのコミュニケーションは、文字なくしてはとても不便です。ここから敢えて漢字に否定的な考え方で述べてみましょうか。
漢字学習の大変さを嫌というほど体験すると、つい考えます。「漢字なんて無ければ楽なのにな…」分かる分かる! いやはや実によく分かるつぶやき(ぼやき)です。ではここからそのつぶやき(ぼやき)をここで実現してみましょうか。
いかがでしょう? もう一つ例を挙げてみましょうか。
読んでいただくと皆さんほぼ同じ感想をお持ちになられるのではないかと思います。実に読みにくいのではないでしょうか。なぜでしょうか。
私たちは漢字を学び、それを日常の中で使うことに慣れています。ですから文章を読むときに漢字を助けに読解しているのです。漢字は表音文字と呼ばれ、その音も表しますが、同時に表意文字として意味も表してくれます。熟語にしてもどの漢字が使われるかで意味の取り違えを防いでいるのです。これが「漢字の役割」です。
漢字は書けなくても大丈夫!?
漢字についての否定的な意見の中に「漢字は書けなくても大丈夫」というものがあります。
これは、現代の進化したIT技術の恩恵によるものです。確かに10年前、20年前と比較して紙に文字を書く機会は減少していると思います。実際、日常での情報のやり取りも、PCやスマホ、携帯電話等のメールやSNSを使ったメッセージで事足りています。そういった情報端末では“文字変換”はキータッチのワンアクションで完了できる一面もあります。
しかし、本当にそうでしょうか。漢字の読みには音と訓の二種類があります。そこから同音異義語や同訓異字が存在します。ということは、どの場合にどの文字を使うかの知識が無ければ情報伝達は正しく行われなくなります。
例えば、
・「石を蹴る」だと遊んでいるのかと思えますが、「医師を蹴る」だと暴力沙汰です。
・「これから訪ねます」だと来てくれるのかと待ちますが、「これから尋ねます」だと聞いてくるのかと思います。
・「西村くん 以外だね」だと他のみんなが何かやるのかなと考えますが、「西村くん 意外だね」だとちょっと褒められているのかと調子に乗りそうです。
やはり無意味に“調子に乗らない”ためにも適切な“楊枝の知識”…じゃなく“用字の知識”は必要です。
「漢字」をどう覚えるか?
さて、本題です。漢字の覚え方と言って代表的なものは、ご存知、「書き取り」です。漢字に限らず、英単語でも古文の単語でも、理科社会の用語でも同様に「書くこと」で暗記していく方法です。もちろんこの「書き取り」を否定はしません。何度も書くことで覚えていくことは正攻法です。しかしこの方法のみを実践していくことは苦行です。だからこそ誰もやりたがらない。
私たちが暗記するときの仕組みについては、「音読」のテーマで、声に出すことで効果が上がることを過去記事でも挙げています。
暗記は覚えることであって、そのやり方は“ひたすら書くこと”だけではありません。ちょっとその辺を考えてみましょう。
「漢字」を覚える方法のあれこれ
まずお伝えしておきたいのは、「書き取り」が無駄なものではないということです。それ自身はとても有効ですし、確実な方法でもあります。しかし、覚えられないものを数十回、時には数百回になるやも知れません。それでは逆効果になり、教科そのものが苦手と感じる確率の方が高そうです。それだけは避けたいものです。効率よく覚えるための方法をいくつかご提案します。まずは実践方法から。
①読みから覚える
「書く」ことよりも「読み」から始める方法があります。テストを採点していると漢字は一般的に「書き」の問題よりも「読み」の正解率が高い傾向があります。ですから先ずは「読み」から入り、徐々に「書き取り」に持っていく方法です。
具体的には、漢字ドリルの1ページ分でそれぞれの漢字の下欄に短文があります。そこで読みを練習し、音訓の読みをインプットしてみて下さい。そこからの書き取りです。導入としてはハードルを下げられます。
②読みながら書く
声に出して読みながら書くことも効果的です。「目で見ながら、書き取り」というやり方よりも、声に出すことで口と耳で触覚と聴覚も使う方法です。感覚を駆使していくことは暗記にはマストです。
③ミニテストを繰り返す
練習したことを確認するためにはテストです。ただし、まとめて行うというよりもこまめに実施してみることです。そうすることで暗記量を小分けにできます。小分けにすると回数は増えますが、正答率を上げることが容易になります。できるようになればモチベーションは上がります。
次に、意味付けの方法を確認してみましょう。
④部首に注目する
漢字は部首で分類可能です。部首は「へん」、「つくり」、「かんむり」、「あし」、「かまえ」、「たれ」、「にょう」の七つに分けられます。この部首ごとにまとめるのも一方法で、部首の問題は漢検でも出題されますが、それはここでは置いておき、部首が持つ意味に注目しましょう。例えば、「さんずい」偏ならば水に関連。「き」偏ならば樹木に関連するというように漢字の持つ意味を把握していくことです。暗記していく上で、特に意味のない記号を覚えるのと、意味を持つ記号を覚えるのは当然ながら後者の方が労力は少なくてすみます。
⑤熟語に注目する
こちらは部首で覚えるのに対してハードルは上がるかも知れません。しかし、実用性で言えばその効果は否定できません。なぜかといえば、私たちが目にする機会は、漢字単体よりも熟語や送り仮名を含めた形が多いからです。具体的な方法としては、教科書をはじめとする読書です。音読ならば読み間違いも防げますね。字を読むことはよく見ることだからです。漢字を認識することから覚える方法です。
さてどうでしょう。ここまで挙げた①~⑤をそれぞれ試してみることもいいですが、複数併せて実践することもおススメです。
漢字を覚えることの効果
漢字を覚えることは、テストでの得点アップが見込めます。これが第一。第二に、文章読解のスピードが上がります。漢字が書ければ、読むことは可能な場合が多いわけです。
つまり。文章を読み進めていくときの妨げは、漢字が読めない場合が一番です。読める漢字が多ければ、読むスピードは意外なほど早くなります。またテストのみを語らずとも、母国語です。正確な知識を持って言語活動を効率よく伸ばしていただきたいと思います。
西村 仁志
【略歴】
公立大学文学部卒業。学生時代は家庭教師。卒業後は公立学校教員として勤務。
その後、塾講師として20年以上経験あり。現在は個別ena河辺校長。
都立立川国際中、私立明大中野八王子中などに合格実績を出し、高校・大学受験においても都立八王子東・国分寺高校や明治大学、法政大学などGMARCH合格者を輩出。
これまでの経験を踏まえ役に立つ情報を楽しく発信していきます。