こんにちは、個別教師Campライターの西村です。今回は皆さんにもなじみがある「音読」について書いてみます。
【音読のやり方って? 音読の効果は?】①音読の宿題ってどんな意味があるの?
小学生の宿題の定番といってもいい「音読」ですが、その効果に疑問を感じた方は少なくないかもしれませんね。小学校で配布される「音読カード」。意地悪く見てしまうと、音読するのを聞かないといけない。保護者サインも印鑑だと味気ないし、はやりのキャラクターのゴム印を買わなきゃかな……、などなど、毎日大変なことでもあります。
もし共感いただいた方がいらっしゃいましたら、声を大にして言います! そう思うのが当然です。森羅万象、自然の摂理に従っても間違いではありません。となると、効果を考えてしまうのが人の世の常でもあります。「なぜわざわざ音読なのか」、「黙読でも内容は分かるからそれでいいのに」、果ては「漢字ドリルと計算ドリルだけでは少ないから、宿題の量の調整なんじゃないか」と、つい(私はですが)思ってしまいそうです。
さて、そうなると「音読」の根拠を調べてみたくなります。文科省HPをチェックしてみました。はい、ありました。
【国語力を身に付けるための国語教育の在り方】
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/toushin/04020301/007.htm
<発達段階に応じた国語教育の具体的な展開>の項目に、(2)3~11・12歳(小学校高学年くらい)まで【基礎作り期】とあります。ここには、<…幼児期では、「読み聞かせ」や可能であれば読書により言葉の数を増やし…>とあります。つまり逆に見れば、自力で読む「読書」だけでなく「読み聞かせ」でも語彙数が増えるという論理があるわけです。さらにここでは、「読む」「書く」が確実に身に付くことが大切であり、それが国語教育の根幹でもあると記されています。
つまり単なる“宿題の量の調整”などという下卑た意味合いは皆無で、お子様たちの真の国語教育に必要であることが分かります。が、しかし、受け売りのまま金科玉条のごとく尊ぶようなことを書くのは、私としても納得がいきませんのでもう少し喰らいついてみます。
【音読のやり方って? 音読の効果は?】②音読の効果って?
では「音読」による効果は科学的にどうなのか。「脳トレ」で有名な医学博士の川島隆太先生(東北大学加齢医学研究所所長)の研究では、ここで取り上げている「音読」についての検証もあります。
NHK健康ch「音読の効果(認知機能・口くう機能の改善)とやり方について」より
黙読と音読におけるMRI画像ですが、赤くなっている部分は血流を表しているそうです。もちろん血流量が多いほど、脳は活性化している訳ですから「音読の効果」はあるようです。
ここで大切なのは、「音読」とは、「声に出して読む」ことだけでなく、その自分の声を「聞くこと」も語彙力を身に付ける言語認識や読解力の定着に大きな効果があるとのことです。また、年齢に関係なく、子どもからお年寄りまでその効果はあるようで、ここまで猜疑心で「音読」を見てきた私でも疑う余地のない感じになってきました。皆さんはどうでしょうか?
さらに、「ワーキングメモリ」という用語がありますね。私たちの日常生活を支える脳の働きです。認知心理学において、情報を一時的に保ちながら操作するための構造や過程を指す構成概念で、「作業記憶」や「作動記憶」とも呼ばれます。具体的には、入ってきた情報を脳内にメモ書きし、どの情報に対応すればよいのかを整理し、不要な情報は削除するのが「ワーキングメモリ」の役割だと言われます。
この能力を鍛えるのにも「音読」は効果的だと言われます。「ワーキングメモリ」を鍛える方法の一つに“デュアルタスク”(ながら動作)があり、「音読」における、
・目で見て理解
・声に出す
・自分が発した声を聞く
といった一連の動作が、脳の前頭前野を刺激し、トレーニングとなるようです。
【音読のやり方って? 音読の効果は?】③音読を英語に応用する
ここにきて、一気に「音読」信仰者となった感がお恥ずかしいですが、手前味噌ながら私自身が授業で実践している方法もこの「音読」効果に当てはまると思い、ご紹介させていただきます。
英語で、生徒さん達は英単語の暗記に励んでくれます。ノートに向かい、ひたすらに何度も何度も書いてくれています。しかしテストをするとなかなか覚えられない単語もあるわけですね。そういう時に多いのが、“発音”メインで覚えようとしていることです。例を挙げるなら、「walk」を「ウォーク」とイメージして覚えているようです。もちろん間違いではありません。しかし採点して感じるのは、「発音」メインなので、「wolk」とか「wark」というスペルミスが見られることです。せっかく何度も書くという努力を積んでくれているのに実にもどかしいわけです。
ですから私は、【発音とスペルを交互につぶやいて書いてみたら】と提案します。つまり「ウォーク・w/a/l/k・ウォーク・w/a/l/k…」という風にです。このやり方では、先述のように
・目で見て理解
・声に出す
・自分が発した声を聞く
に付け加えて、
・書くことで手が覚える効果も見込めるからです。
五感を最大限に使うことで記憶の補助にすることを念頭に置いた提案です。ただ、味覚と嗅覚は使えませんけども(笑)。もしお子さんがぶつぶつ呟きながら勉強してても怒らないでやって下さい。「音読」効果を使っているのかもしれませんので。
文章を声に出して読むだけでなく、国語以外の教科でも、問題文などを「音読」することは理解につながります。まずはそういった取り組みから始めてみられるのもありなのではないでしょうか。お子さんたちは限りない可能性を秘めておられます。その可能性を引き出す方法も一通りではないですよね。「音読」、ぜひ試していただければと思います。
西村 仁志
【略歴】
公立大学文学部卒業。学生時代は家庭教師。卒業後は公立学校教員として勤務。
その後、塾講師として20年以上経験あり。現在は個別ena河辺校長。
都立立川国際中、私立明大中野八王子中などに合格実績を出し、高校・大学受験においても都立八王子東・国分寺高校や明治大学、法政大学などGMARCH合格者を輩出。
これまでの経験を踏まえ役に立つ情報を楽しく発信していきます。