こんにちは、個別教師Campライターの西村です。
シリーズ、第3回は「訓読みと大和ことば」について書いてみます。
第1回はこちらから→ ※漢字の話 ~その①プロフィール~ (2023.10.02)
第2回はこちらから→ ※漢字の話 ~その②漢字の功罪~ (2023.10.06)
私たちが普段使っている “漢字”
複雑でありながら便利な文字。今回もそんなところをフィーチャーしていきます。
◇漢字以前
ここでも書いてきましたが、「漢字」は、3500年ほど前に黄河文明(中国)で作られた文字です。
それが4~5世紀ころに日本に伝わってきたとされています。
「漢字」が伝わるまで私たち日本人は文字を持たなかったとされます。つまり漢字以前の“記録”がないわけですね。
というわけで日本語がいつ頃できたのかは今のところ謎のままになっています。
(皆さんが社会で学習した471年の)「稲荷山古墳 鉄剣銘」(埼玉県)が日本最古の漢字資料といわれています。
▷大和ことば
ここで登場するのが「大和ことば(やまとことば)」です。これは漢字が日本に入ってくる前から使われていた言わば “純日本語”というわけですね。
こう書くと何やら特別な言葉のような感じがするかも知れませんが、私たちが普段使っている言葉そのものです。
「動詞」…/はなす/かく/わらう/といった動きを表す言葉
※ただし漢語や外来語+「~する」(サ変)は大和言葉ではありません。
「形容詞」…/たのしい/うつくしい/あつい/さむい/といった状態や性質を表す言葉
「助詞」…/~は/しかし/~の/~と/といった単語の関係や対象などを表す言葉
※“てにをは”ともいい、単語と単語を結びつける語です。
◇漢字がやってきた!
さて、そうして文字を持たなかった私たちの祖先、古代の日本人は「漢字」という文字に出会います。
仏教の経典や学問の典籍といったかたちで伝わってきます。
これまで記録する文字を持たなかった日本にとっては大きな衝撃だったことと思います。そして徐々に「漢字」を使うようになります。
◇万葉仮名としてデビュー
私たち日本人は、まず「漢字」をその字が持つ音をもとに「大和ことば」に当てて使用します。これが「万葉仮名」です。
「万葉仮名」とは、漢字の音をもとに、意味は別にして「表音文字」として音のみを借りたものですね。
有名な最古の歌集「万葉集」で使われたことが代表的なので「万葉仮名(まんようがな)」と呼ばれます。
いくつか例を挙げてみると
歌「万葉集」(巻一)28
春過ぎて 夏来たるらし 白妙の 衣干したり 天の香具山
これが
「万葉仮名」 春過而 夏来良之 白妙能 衣乾有 天之香来山
現代で言えば、ローマ字で書くようなものとイメージしてもいいのではないでしょうか。
Gendaide ieba Roma-ji de kakuyouna monoto ime-ji sitemo iinodewanaidesyoka. (うわぁ…読みにく…)
さあ、これで記録もバッチリ!「漢字」が来てくれてヨカッタヨカッタ!!
とはならなかったのは皆さんもご承知の通り、日本人、やっぱり魔改造していくわけです。
◇「漢字」の「読み」と「文字」を魔改造
「漢字」はその読み「音」とともに入ってきたわけですから、場合によっては日本語が“中国語化”してもおかしくはない状況だったのですが、これまで慣れ親しんだ「大和ことば」を捨て去ることができなかったのです。
つまり
「山」って〔shān : シァン〕って言うけど、俺らが言ってる「やま」じゃん?
そんじゃ「やま」って読んでいいんじゃね? |
そんな会話があったかどうかは知りませんが、とにかくこんな感じで(笑)「大和ことば」を当てはめていったのですね。
更に、「万葉仮名」を分解して「片仮名(カタカナ)」と「平仮名(ひらがな)」を作りだしました。
いやはや、魔改造に次ぐ魔改造、やりたい放題的な…。
こうやって「漢字」の訓読みが作られ、おまけに今の日本語の文字の三者三様が完成したのですね。
◇余談として
「漢字」に次ぐ外来語の洗礼といえば、
南蛮貿易の頃
ポルトガル語から
カッパ【capa】「袖なしの外套、マント」を意味する→合羽
カルタ【carta】「手紙、地図、トランプ」を意味する→骨牌
タバコ【tabaco】→煙草
江戸時代には
オランダ語から
カバン【kabas(カバス)】→鞄
ガラス【glas(フラス)】→硝子
コーヒー【koffie(コーフィー)】→珈琲
これらは一部ですが、なんと“外来語”の大先輩である「漢字」を使って表記するという逞しさ。
前回も書きましたが、
日本仕様に変えていくこの工夫、
西洋料理のハンバーグに、大根おろしと大葉を組み合わせて“和風ハンバーグ”を、
または、
ハンバーガーに照り焼きソースを組み合わせて“テリヤキバーガー”を、
もうこの食も文化も、ガッツリと自分のものにしていく日本人の応用力のすばらしさ!!
まさしく“和魂洋才(わこんようさい)”
和魂洋才
(わこんようさい):日本固有の精神と西洋の知識のこと。
また、その両者を兼ね備えていること。
三回シリーズにお付き合いいただきありがとうございました!
三回にわたって「漢字」について書いてみました。
「漢字」のいろんな “顔” を知ることでもっと幅広い言語生活を送ってほしいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
▼受験情報ニュースほかお役立ちコンテンツが無料でご覧いただけます。会員登録はこちらをクリック!▼
西村 仁志
【略歴】
公立大学文学部卒業。学生時代は家庭教師。卒業後は公立学校教員として勤務。
その後、塾講師として20年以上経験あり。現在は個別ena河辺校長。
都立立川国際中、私立明大中野八王子中などに合格実績を出し、高校・大学受験においても都立八王子東・国分寺高校や明治大学、法政大学などGMARCH合格者を輩出。
これまでの経験を踏まえ役に立つ情報を楽しく発信していきます。