こんにちは。個別教師Campライターの杉浦です。
近畿大学は10月26日に、ニホンウナギの完全養殖に成功したと発表しました。
完全養殖とは、卵から育てた魚の卵と精子を使って次世代を人工的にふ化させる技術です。
2010年に水産研究教育機構が世界で初めて成功させましたが、大学では初の快挙となります。
魚の減少と養殖魚
近年、我々は魚の漁獲量の減少についてよく聞くようになりました。1984年には日本の漁獲量がピークの1282万トンを記録しましたが、それが2020年には423万トンにまで減少し、36年間で約3分の1に減少しています。鮭やサンマ、スルメイカなどの一部の魚種が毎年不漁と報じられる一方で、世界的な人口増加と水産物の需要の増加により、水産物の取り合いが世界中で発生しています。
このような状況から注目を集めているのが養殖魚です。しかし、一般的には天然魚と比べて人口的で安全性が低く、味も劣るというイメージが広まっています。しかし、最近では大学や水産業界が協力して養殖魚の安全性と品質向上に取り組んでおり、養殖魚のブランディングも進んでいます。
養殖魚とは?
そもそも養殖魚とは、稚魚の段階から養殖場で管理された環境で育った魚を指します。国内ではさまざまな魚種が養殖されており、2021年の総生産量ではブリ(40%)、マダイ(27%)、カンパチ(12%)が主力となっています。
養殖魚の養殖方法も様々で、海上養殖と陸上養殖が存在します。安全性に関しては、現在は規制が行われており、残留農薬や有害物質の管理が進んでいます。
一般的には、養殖魚でも安心して食べられるようになっていますが、アニサキス食中毒のリスクが低いのが養殖魚の利点です。最近では養殖魚のブランディングも進み、特定の飼料や環境で育てた養殖魚が市場に出回っています。
天然魚と養殖魚のちがい
ここで、天然魚と養殖魚の特徴を比較してみましょう。
天然魚
見た目…色鮮やかである
香味…うまみや香りが強い
脂…旬の時期にはよく脂が乗っている
身の質…引き締まっていて硬い
養殖魚
見た目…日焼けして黒っぽい
香味…まろやか
脂…季節問わず脂が多い
身の質…柔らかい
天然魚と養殖魚の違いは見た目や味、脂の含有量、硬さなどであり、それぞれ一長一短があることがわかります。
養殖魚の種類
次にどんな養殖方法があるのか、以下に紹介します。
完全養殖
卵の段階から最終生育過程まですべて人の手によって育てられます。
クロマグロ、タイ、サーモンといった魚が育てられており、すべての生育過程を人間がコントロールできますが、餌のコストが高くなってしまいます。
蓄養
海や川で育った稚魚を捕獲して育てるという方法です。
特にウナギは畜養で養殖されることで有名です。冬から春にかけて採れたシラスウナギを6ヶ月から1年半かけて養殖し、わずか0.2gの稚魚を300g前後まで飼育して出荷しています。
海上養殖
海の中に生簀を入れて養殖します。自然の海を利用するため、水質管理ができず、寄生虫が生簀に入ってしまう可能性があります。
陸上養殖
海から離れた場所で飼育する方法で、山などでも養殖できます。
海水の代わりにミネラルが多く含まれている温泉水を利用するなど、様々な工夫がされています。特に水質やえさの管理が必要な種類の魚が陸上養殖で育てられています。
天然魚と養殖魚、それぞれのメリットとデメリットを理解し、消費者は目的に応じて選択することが重要です。
未来の海の幸を考える上で、魚の選択は私たちの食卓に大きな影響を与えることでしょう。
まとめ
最近では養殖魚のブランディングも進み、特定の飼料や環境で育てた養殖魚が市場に出回っています。天然魚と養殖魚には一長一短があるため、皆さんも目的に応じて選んでみてください。
杉浦
【略歴】
高校時代はSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の取り組みに参加し、自身も学外発表などを経験。国立大学への推薦合格後、大学では生物・農学分野を専攻。中学受験では都立武蔵中・三鷹中・私立国学院久我山中などの指導実績あり。高校受験では都立高全般、中大杉並高などの指導を行う。これまで培った生徒ごとの苦手分析や、定期テスト・模試対策などを基に、役立つ情報を発信していきます。